「ちょっとうまい栗きんとん」のはなし

(前回からの続き)
「ちょっとうまい栗きんとん」のはなしは、
『 黒田辰秋 木工の先達に学ぶ 』 早川謙之輔 著 新潮社
早川氏が手土産に<すや>という菓子屋の栗きんとんを持って
黒田氏を訪ねたときの一話。

『 他にも数件の栗きんとんを商う菓子屋があったが、
<すや>のそれは他の店のものよりちょっとうまい気がする。
そんなことを何気なく口にすると、機嫌のよかった先生がいきなり怒り出した。「ちょっとうまい、とは何だ。どこの店でも、誰が作っても、そこそこのものはできるだろう。その中で<すや>のがうまいと人に言わすために、お前の言うちょっとうまいと思わせるために、店がどんな努力をしているかわかっているのか。」
叱咤はどんどんエスカレートしていく。
「木工でもそうだ。ちょっと良い物を作るためには、とんでもない努力がいる。人のしない努力をして、やっとほんのちょっとだけ良い物になるのじゃないか。そんなこともわからんで、ちょっとうまいなんぞと人ごとのように言う者に何ができる。ちょっとの差が実は大変なことだとわからん者は、たった今、仕事を辞めてしまえ」』
(出典『 黒田辰秋 木工の先達に学ぶ 』 早川謙之輔 著 2000年発行 新潮社)

著者の記憶や受け止めかたもあります、
実際どうだったのかはわかりません。
それでも、こういうエピソードを思い浮かべながら
黒田辰秋作の進々堂(喫茶店)のテーブルや
鍵善良房(くずきり屋さん)の飾り箪笥をみるのもまた楽しい。

椅子の製作で
、、ここの角度こうかえたら座り心地よくなるはず
 こうすれば強度もでる、と思って試作してみて
 少しだけど明らかな変化を確認したはいいが
 そうするにはここもここも変わってきて
 こっちとこっちはどっちの「ちょっと」を優先しようか、
 この治具は使えなくなるし、これ変える前の仕口と比べると
 何倍も手間がかかる、価格も決まっていて納期も迫っている、、
というとき、このはなしを思う。
手間をかければよいわけではけしてない。けど
「ちょっと」でも効果のあることなら
きっと美味しさをわかってくれる人はいるはず。
そう思って作った椅子だったので
KN邸での納品は殊更嬉しいものだった。

京都炭山朝倉木工 KYOTO SUMIYAMA ASAKURA MOKKOU
Posted by 京都炭山朝倉木工 KYOTO SUMIYAMA ASAKURA MOKKOU
投稿 2010年02月19日
最終更新 -0001年11月30日
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